七十二候 地始凍 立冬次候
地始凍 ちはじめてこおる
コクリコクリとふねをこぐ
キラキラ 霜が白い粒をまき
ムクムク 霜柱が力比べをしてる
もう そろそろだろう
はたらきつめて
ため込んだ疲れを癒やす
体を横にして
乾いて 凍てつく時間
大地が眠りに就く
また訪れる
命育む季節まで
→金盞香57
←山茶始開55
七十二候 山茶始開 立冬初候
七十二候 楓蔦黄 霜降末候
楓蔦黄 もみじつたきばむ
赤に 黄に 橙に
どの色にしましょうか
隣のあなたとは違う色で
私だけの色で
ひとつの色だけでも良いけれど
ふたつの色を重ねるのも良いね
旅立ちを 祝うための 粧いだから
錦の あでやかさで にぎやかに
さいごに 燃え立つような 彩で
明るく 秋を
見送りましょう
それが 私達の
つとめだから
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
暦の上での秋はこの候でおしまいです。
11月8日は立冬です。
暦の上では冬を迎えます。
→山茶始開55
←霎時施53
七十二候 霎時施 霜降次候
霎時施 こさめときどきふる
にっこり笑った青空が
ポタポタ涙を流し始める
あっと見上げた涙の空は
もう笑う青空に戻っている
もう大丈夫なの?
涙は終わったの?
まだ どこか
悲しみを抱えたような空
泣いてもいいんだよ
そんなに無理に笑わなくても
→楓蔦黄54
←霜始降52
七十二候 霜始降 霜降初候
霜始降 しもはじめてふる
見上げた空には
なんの痕跡も残っていなかった
いつもの見慣れた景色が
いつの間にか こんなことに
しんと しずまる 世界
いったい なにがおこったというのか
まるで見当がつかない
なにか いつもと
かわったことはないか
そういえば
今朝は とてつもなく
冷える
ただ それだけがいえる
→霎時施53
←蟋蟀在戸51
→霜降
七十二候 蟋蟀在戸 寒露末候
蟋蟀在戸 きりぎりすとにあり
宿る露がふるふる ふるえる冷たさに
かわってしまうような 夜のことです
力なく トン トンと
戸を叩くものが ありました
誰か訪ねて 来たのだろうか
うかがっていると
「中に入れてはもらえないでしょうか
外はもう寒くて 仕方ないのです」
「体が冷えて歌うこともままなりません
どうか私を あなたの家へ」
と聞こえてくるのです
「秋を 見送り終えるまでは
命の限りを尽くして
この歌を 贈り続けたいのです」
「あなたにも お聞かせいたしましょう
ですから どうか 私を」
耳を澄ませていると
戸口に響く鳴き声が
そのように願う声に
聞こえてくるのです
→霜始降52
←菊花開50
七十二候 菊花開 寒露次候
菊花開 きくのはなひらく
薬なのだというよ
不老長寿の薬効があると
ほら そこに咲く花に宿る 雫
とってきてあげるよ
それを飲めば きっと
もっと ずっと
一緒に居られるから
蜜のかわりに 飲めば
きっと
そっと
幕を下ろす命あり
花は静かに
それを見守る
←蟋蟀在戸51
←鴻雁来49