ポケットの中庭

ゆっくり ゆっくりと 綴っています

七十二候 楓蔦黄 霜降末候

楓蔦黄 もみじつたきばむ 赤に 黄に 橙にどの色にしましょうか 隣のあなたとは違う色で私だけの色で ひとつの色だけでも良いけれどふたつの色を重ねるのも良いね 旅立ちを 祝うための 粧いだから 錦の あでやかさで にぎやかに さいごに 燃え立つような 彩で…

七十二候 霎時施 霜降次候

霎時施 こさめときどきふる にっこり笑った青空が ポタポタ涙を流し始める あっと見上げた涙の空は もう笑う青空に戻っている もう大丈夫なの? 涙は終わったの? まだ どこか 悲しみを抱えたような空 泣いてもいいんだよ そんなに無理に笑わなくても →楓蔦…

七十二候 霜始降 霜降初候

霜始降 しもはじめてふる 見上げた空にはなんの痕跡も残っていなかった いつもの見慣れた景色がいつの間にか こんなことに しんと しずまる 世界いったい なにがおこったというのか まるで見当がつかない なにか いつもとかわったことはないか そういえば 今…

七十二候 蟋蟀在戸 寒露末候

蟋蟀在戸 きりぎりすとにあり 宿る露がふるふる ふるえる冷たさにかわってしまうような 夜のことです 力なく トン トンと戸を叩くものが ありました 誰か訪ねて 来たのだろうかうかがっていると 「中に入れてはもらえないでしょうか外はもう寒くて 仕方ない…

七十二候 菊花開 寒露次候

菊花開 きくのはなひらく 薬なのだというよ 不老長寿の薬効があると ほら そこに咲く花に宿る 雫 とってきてあげるよ それを飲めば きっと もっと ずっと 一緒に居られるから 蜜のかわりに 飲めば きっと そっと 幕を下ろす命あり 花は静かに それを見守る ←…

七十二候 鴻雁来 寒露初候

鴻雁来 こうがんきたる 冴え渡る空の青さにはるか高くを渡る風を知る もう そろそろ だろうか しんと鎮まる空気に耳を澄ませてみる 声が 聞こえてきたりは しないだろうか するすると幕を下ろしてゆくだいだい色の空に目を凝らしてみる 見えてきは しないだ…

七十二候 水始涸 秋分末候

水始涸 みずはじめてかるる 事の成り行きを そっと 見守る 先から 端から するすると 少しずつ ひいて ゆく 生気を 一所に 集めて とじて ゆく これで おしまい 命の水を 少しずつ 返上して ゆく その姿を ただ そっと 見守る →鴻雁来49 pippinouta.hatena…

七十二候 蟄虫坏戸 秋分次候

蟄虫坏戸 むしかくれてとをふさぐ 寝ぼけ眼に桃の笑顔が映った 嬉しそうに舞い上がる蝶に心がふわり舞い上がった 雀の家の見学会に参加したその作りに感嘆した 桜を見たふわぁっと風に乗って旅立っていく後姿を いいかげん しっかり目を覚ませ雷様に怒鳴れた…

七十二候 雷乃収声 秋分初候

雷乃収声 かみなりすなわちこえをおさむ お力添えいただき感謝申し上げます 私達だけでは到底ここまでたどり着くことは難しいことだったでしょう これほど 有り難いことはありませんどれだけ感謝をしても足りないくらいです うやうやしく頭を下げ続ける 稲穂…

七十二候 玄鳥去 白露末候

玄鳥去 つばめさる どうだい 上手くなっただろう 嬉しそうに 舞う ほら こんなことだって できるようになったよ 得意げに見せてくれる 確かに たくましく育ってくれた これからの 長い旅路 これで連れて行けるか 不安がないわけではない 旅立ちの時は迫って…

七十二候 鶺鴒鳴 白露次候

鶺鴒鳴 せきれいなく こっち こっちほらこっち こっち ちゃんとついて来て迷わないようにしばらく付き添うよ 惑わされないでしっかり歩いて そうそうその調子 疑わないで信じて 大事なことなんだよ そう言って 先を行っては立ち止まり また 先に行っては待っ…

七十二候 草露白 白露初候

草露白 くさのつゆしろし ひょいっと 一粒摘み上げられたら 空を透かして見てみようかそうしたらそこには何が見えるだろう? 草の葉の屋根を越えて 目覚める少し前の空の寝顔薄く流れ桃色に染まる雲の頬朝に溶け始めた仄かな月の横顔 キラリ光るこの玉にうつ…

七十二候 禾乃登 処暑末候

禾乃登 こくものすなわちみのる 一段 一段 懸命に登り ようやく ここまで とてもたくさん お力添えをいただいたとてもたくさん 面倒をかけてしまった おかげさまで無事にこの あと一歩のところまで どれだけ感謝してもたりない これで途切れさせることなく …

七十二候 天地始粛 処暑次候

天地始粛 てんちはじめてさむし いつまでも かわらないそんなこと あるわけない 常に流れる時の中そこにあるものは常に移りかわっていく どんなに淋しくおもたって世の中 止まることは知らない もうここが限界なのさそろそろ休めと いうことさ かなしむなよ…

七十二候 綿柎開 処暑初候

綿柎開 わたのはなしべひらく 天を開いた うてな走りはじめる 僕ら ふわふわ 白い雲からでて どこまでもひたすらに翔けてゆく ねじねじ 螺旋を描いてくるくる 円を描いて どこまでも長くいつまでも永く 花の上を舞い葉の上を滑り土の上に遊ぶ 疲れなんて知ら…

七十二候 蒙霧升降 立秋末候

蒙霧升降 ふかききりまとう ゆらゆら 白い幕が立ちはだかる “お忘れ物はございませんか?” 目の前に 突如現れ 問いかける “こちらはあなたのものでは?” 差し出されたものに覚えはなく 「いいえ 違います」 “それではこちらは?” 「それも違います」 “お忘れ…

七十二候 寒蝉鳴 立秋次候

寒蝉鳴 ひぐらしなく 夕空へぱっと 手を振って また明日 はじまった季節の夕暮れ ぽつんとたたずむ姿をうつして なきつづける声が家路にこだまする →蒙霧升降39 pippinouta.hatenablog.com ←涼風至37 pippinouta.hatenablog.com

七十二候 涼風至 立秋初候

涼風至 すずかぜいたる それは 空の高くから降りてくる うん それで? いまだ残る夏の余韻を納めるために走り回るんだよ もう夏はいってしまったと静かに知らせて回るんだよ ふーん なんだか 淋しいな 仕方ないよ順番だからね 火照った大地を冷まして秋の居…

季語 初秋 花火

花火 ぱぁんと咲いてあっさり散ってゆくね淋しくないのかな うるさすぎやしないかいあの大きな音が気に入らんよどっきとするよ 普段は見向きもしないのにね花なら明るい時間に 咲いているのを見たらいいだろう 人が多いねこの暑いのにこんなに集まらなくたっ…

季語 晩秋 行く秋

行く秋 コトリ音を ひとつたてて 行ってしまう これですべて 届けおえましたそれではまた会いましょう と 秋の背中は夕焼けの中に静かに溶けていきます

季語 晩秋 秋惜しむ

秋惜しむ 行かないでほしいんだ まだいてほしいんだ かきくりかぼちゃ なしいもぶどう おいしい おもいで

霜降 10月23日頃のこと

霜降 さすがにここまで来ると今までのようにはいかない 結ぼうにもかたくてすぐに パキッと折れてしまう そのうちぱらぱらと細かく砕けていって 朝にはあたり一面を真っ白にさらさら飾ってしまう →立冬 pippinouta.hatenablog.com 寒露← pippinouta.hatenabl…

寒露 10月8日頃のこと

寒露 どうりで震えが止まらないわけです いつのまにか結ぶ手が寒さへと姿をかえています と わずかな 明かりにかすかにふるえている 姿が見えます 生みだされてゆく露はすっかり冷えて季節はまた一段と深まったとそう いうのです →霜降 pippinouta.hatenablo…

季語 仲秋 無月

無月 もういいかいまぁだだよ もういいかいまだ だよ もういいかいもういいよ どこかな?どこかな? あっ !見いつけた 指さす空には 雲の後ろに隠れていたお月様が今 少し雲の隙間に姿をのぞかせて・・・・・・ くれるだけでもいいのにな

季語 初秋 赤のまんま

赤のまんま おもちゃのお椀によそわれた赤いめでたいごはんはね どろんと 化けた私らと仲良く遊ぶ 一緒に 化けたたでの花 さぁ 召し上がれ

季語 初秋 荻の声

荻の声 よーく耳を澄ませてごらん 風はさらさら荻をならしてゆく 聞こえるだろう 巡ることをうつろうことを届ける 声が 荻がさらさら秋を知らせている

秋分 9月23日頃のこと

秋分 よいしょと腰をおろし 来た道仰ぎ見れば白く気が抜けて座込んでいる夏はいる 秋の真ん中で粧いを新たに咲く花を愛で眠りにつく前の命と春からの話に花を咲かせる一時を過ごし 行く道見下ろせば首を長くし待つ頬を緩ませる冬はいる 麓までにはまだ道半ば…

白露 9月8日頃のこと

白露 そっと葉の縁に結んでゆく ひとつ ひとつ慎重に 丁寧に ふーっと息をつくような些細なことでも 涙をながすようぽしゃりとおちてしまう そんな 繊細な いとなみ 寝静まる間に涼しさが生み出す 朝陽にキラキラ白く光る はかない 宝石 →秋分 pippinouta.ha…

処暑 8月23日頃のこと

処暑 あれだけ 騒がしく降りしきっていた声はすっかり 遠のいて 暑さはどこか淋しそう ぼんやり仰いだ空はすーっと高くあの頃の色はもういない 草の間から一心に誰かを呼んでいる鈴の声が聞こえてくる ほぅと ひとつ息を 吐いた暑さは うつむいてしまう この…

季語 初秋 残暑

残暑 居残りじゃないからな置いてけぼりにされてなんかないからな迷子じゃないぞ勘違いするな 余韻ってあるだろう知ってるか これだけ騒がしくやっている最中だぞあっさり 過ぎ去られてみろよぽっかり穴が空くぞ心に淋しくなるぞ そうならないようになこうし…