ポケットの中庭

ゆっくり ゆっくりと 綴っています

七十二候 蟋蟀在戸 寒露末候

蟋蟀在戸 きりぎりすとにあり

 

宿る露がふるふる ふるえる冷たさに
かわってしまうような 夜のことです

 

力なく トン トンと
戸を叩くものが ありました

 

誰か訪ねて 来たのだろうか
うかがっていると

 

「中に入れてはもらえないでしょうか
外はもう寒くて 仕方ないのです」

 

「体が冷えて歌うこともままなりません
どうか私を あなたの家へ」

 

と聞こえてくるのです

 

「秋を 見送り終えるまでは
命の限りを尽くして
この歌を 贈り続けたいのです」

 

「あなたにも お聞かせいたしましょう
ですから どうか 私を」

 

耳を澄ませていると
戸口に響く鳴き声が

 

そのように願う声に
聞こえてくるのです

 

 

 

 

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