ポケットの中庭

ゆっくり ゆっくりと 綴っています

七十二候 鱖魚群 大雪末候

鱖魚群 さけのうおむらがる

 

なぜ
上るのだろう
せっかく下ったというのに

 

上るのなら 下らなければいい
下るのなら 上らなければいい

 

それだけのことなのだ

 

無駄なことじゃないか
分かってはいるんだ

 

どうしてだろう

 

無性にいきたいんだ
この水が懐かしいんだ
上らずにいられないんだ

 

この先 体が傷つき
ぼろぼろになろうとも

 

待っている運命が
どのようなものであろうとも

 

いかずにはいられない

 

そういうものなんだ
そういうものなんだ

 

だから 行くよ

 

母なる生まれ故郷へ

 

 

 

 

→乃東生64

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七十二候 熊蟄穴 大雪次候

熊蟄穴 くまあなにこもる

 

ほら 見てごらん
山があんなに白い

 

もう すっかり冬だね

 

あそこは ここよりも
もっと寒かろうね

 

きっと 寒くて寒くて
こごえてしまうだろうね

 

山の生き物たちは
どうしているだろう

 

寒さにふるえていないかな

 

大丈夫だよ

 

おやすみのあいさつをして
みんな家の戸を閉じて

 

今頃 暖かなお家の
ふかふかおふとんに くるまって

 

仲良く一緒に
眠っているだろう

 

きっといい夢を見ているよ

 

目覚めの春の
にぎやかな夏の
豊かな秋の夢を

 

さぁ僕たちも帰ろう

 

 

 

 

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七十二候 閉塞成冬 大雪初候

閉塞成冬 そらさむくふゆとなる

 

空は雲に覆われて
塞がれて

 

大地は雪に覆われて
閉ざされて

 

交わされる言葉は今はなく

 

お互い命栄える季節の夢を見る

 

湧き上がる命の鼓動を
勢い溢れる命の跳躍を
満ち満ちる命の歓喜

 

にぎわっていたあの頃は
すっかり重たい沈黙に
うめられて

 

静寂の中に
皆 穏やかに眠る

 

安らかな休息の季節が
訪れている

 

 

 

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七十二候 橘始黄 小雪末候

橘始黄 たちばなはじめてきばむ

 

するすると降りてきて
お日様は明かりをおとしてゆく

 

それを補うために
まるい実は明るさをましてゆく

 

光り輝く色に
染めなおして

 

かわりなく 世界を
きらびやかに 照らすために

 

この色は
弱まりゆく陽射しをたすける
一翼を担う

 

 

 

 

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七十二候 朔風払葉 小雪次候

朔風払葉 きたかぜこのはをはらう

 

いくものは遠慮するな

 

どんっと 乗っかってこい

 

今 運んでやろう

 

次 行く先へ

 

心配はするな

 

しっかり うけとめて

 

連れてゆく

 

安心して この風へ

 

身をまかせ

 

乗ってゆけ

 

 

 

 

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七十二候 虹蔵不見 小雪初候

虹蔵不見 にじかくれてみえず

 

隠れてしまう わけではないんだ
恥ずかしがっている わけでもないんだ

 

ただ きかいが
なくなってしまうだけ

 

ちゃんといるんだよ
いつだって どこにだって

 

ほら 見えるでしょう

 

どこまでも高い空の青が
色づいた樹の実の赤が
寒さに負けない葉っぱの緑が

 

これが証拠

 

幻燈を投影するきかいは
なかなか訪れないけれど

 

だからって
隠れてしまっているわけではないんだ

 

 

 

 

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小雪

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七十二候 金盞香 立冬末候

金盞香 きんせんかさく

 

そうっと 揺れるのです

 

さめざめ 冷めきった風に

 

ふれられて

 

ふるふる 揺れるのです

 

その度に こぼれおちるのです

 

金の盃に なみなみ つがれた

 

なんとも美しく きらめく香りが

 

そうして

 

あたりいっぱいに ながれだすのです

 

私はここにいると

 

伝えるように

 

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

キンセンカとは、キク科の金盞花ではなく水仙のことです。

 

 

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